肌寒い冬、緑色のつややかな葉の間から紅色の花をのぞかせるヤブツバキ。真ん中の黄色い花筒の奥には甘い蜜がたっぷり。この蜜を求めてメジロの声が聞こえてきます。
ツバキの名の由来は諸説あり、葉が厚いので「厚葉木(アツハキ)」、葉が革質で強いので「強葉木(ツバキ)」、葉に艶があるので「艶葉木(ツヤハキ)」などと、花より葉に注目していたようです。
徳川幕府二代目将軍秀忠が殊のほかツバキを好んだことから、新品種を求めて一大園芸ブームが巻き起こり、かつては葉を愛でていたものが、現在では花のほうを鑑賞するように変わり、1,000を超える品種が生まれています。
ツバキの種子にはおよそ35%もの油分が含まれていて、これを搾った「椿油」は食用、薬用、灯火用として古代には税として上納されていたとのこと。
薬用としては軟膏基剤や頭髪油に利用し、搾ったカスは漁獲毒用やミミズ駆除用になります。
民間療法としては、関節や筋をちがえたときに葉を4~5枚と甘草(カンゾウ)2gを煎じて飲む方法があります。
虫刺されには若い芽をすりつぶした汁を塗る、夜尿症には実を黒焼きにして飲むと良いようです。
また滋養強壮には、乾燥した花を刻んで熱湯を注ぎ健康茶として飲みます。
ちなみに筑紫野市はツバキを市の木に指定しています。
ここからは余談になりますが、藤棚で有名な武蔵寺のご本尊である薬師如来と脇侍十二神将は椿材で刻まれていて、二日市温泉はこの薬師如来のお告げにより発見されたと伝えられています。
また、筑紫野市内には「紫」という地名がありますが、昔はこの地で紫草という薬草も栽培し、聖徳太子の定めた冠位十二階位の最高位の濃い紫色に布を染めるのに使われていたのだそうです。
そしてその濃い紫色に染めるには媒染剤にツバキを焼いた灰を使うのです。
紫は灰さすものぞ海石榴市(つばいち)の八十(やそ)のちまたに会える子や誰
『万葉集』巻十二 3101
(歌意)紫染めには椿の灰を加えるものだ、それと同じ呼び方の椿市の八十で会ったあなたは誰ですか、お名前を。
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※ 中国医学の基礎的な理論と季節の身近な野草(薬草)について知識を深め、さらに季節の特徴を加味した養生粥を作って食します。
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